『書くことが続かない』店長に、行動日記から渡した

2026-05-04 · note 掲載版

『書くことが続かない』店長に、行動日記から渡した

2026年4月29日、ある店長と長めに話した。

その店長には、半年くらい前から「日記をつけてみたら」と提案していた。 何回か勧めたけど、ハードルが高そうだった。 書こうとして、3行で止まる、というのを何度か聞いていた。

その日、私の側から提案を変えた。 「いきなり感情を書こうとしなくていい。最初は行動だけでいい」

段階を分ける

感情を書く、というのは、私自身もずいぶん時間がかかった。 最初の1年くらいは、感情を書こうとして「特に何もない」で終わる日が多かった。

そこから、感情の前に「事実」を置く構造に変えた。 事実:今日何をしたか。 解釈:それをどう受け取ったか。 別視点:他の見方はあるか。 最小行動:明日ひとつ、何をするか。

この4段が安定して書けるようになると、解釈の中に感情の名前が混じり始めた。 「疲れた」「うれしかった」「めんどくさい」「ホッとした」——書こうとしていなかったのに、自然に出てくるようになった。

その流れを、店長に渡したかった。

「行動だけ」のサンプルを渡す

店長には、最初の1ヶ月は 行動だけ書いて と伝えた。 具体的には、こういう書き方でいい、と例を書いて見せた。

シフト調整、田中さんと話す
〇〇店から電話
退勤、コンビニ寄って帰宅 

これだけでいい、と伝えた。 書く時間は5分、長くて10分。感情は要らない。今日何をしたか、だけ。

「これだけ?」と店長が聞き返した。 「これだけ。3週間続いたら、次の段階を渡す」

私自身、最初の1ヶ月で何をしていたか思い出すと、たぶん同じだった。 事実を書くだけで精一杯だった。感情は、まだ言葉にならなかった。

半年前、別の場面で同じ手順を試していた

ここから話を、半年前に戻したい。

2025年11月25日、ある社員との評価面談の場面で、別の段階分けを試していた。 本人の自己評価を、3つの視点に分けて書いてもらう、というやり方。

自分の視点:自分はどう感じたか。
上司の視点:上司から見て、自分の動きはどう映っていたか。
第三者の視点:その場にいた他人が見て、何を感じただろうか。

最初は「自分の視点」しか書けなかった。 でも、書こうとして数分手が止まったあと、「上司の視点」のところに少し違うことが書かれた。 「私はちゃんとやったつもりだったけど、上司から見たら、報告のタイミングが遅かったかもしれない」

その瞬間、本人の中で何かが動いていた。 自分ひとりの視点では立ち上がらなかった解釈が、視点を分けることで初めて立ち上がる。

そのとき気づいたのは、人の中に複数の視点を立てるには、紙に書くことが要るらしい、ということだった。 口頭で「他の人から見たら?」と聞かれても、人は言葉に詰まる。書く欄を分けて与えると、不思議と言葉が出てくる。

段階を渡す、というやり方

評価面談で「視点を分けて書いてもらう」と、店長に「行動日記から始めてもらう」のは、根本的には同じことだった。

いきなり「感情を書け」「自分を客観視しろ」と言っても、人はできない。 私自身もできなかった。

代わりに、書く対象を細かく分けて、どこから入るかを選んでもらう。 最初は事実だけ。次に解釈。それから感情。最後に別視点。

各段階のあいだに、3週間〜1ヶ月の助走期間を置く。 途中で書けなくなったら、ひとつ前の段階に戻る。

その手順は、私が自分自身に試してきた手順そのままだった。 試行錯誤の3年分を圧縮して、3週間×4ステップに整えて、店長に渡した。

自分が試した手順を、人に渡す

その日のジャーナルに書いたのは、これだった。

「自分のジャーナリング構造を、相手に合わせて段階的に渡している。これがたぶん、いちばん自然な渡し方だ」

何かを「教える」のではなく、自分が実際にやって、効いた手順を、相手の足の長さに合わせて分けて渡す。 これが、いま私にできる関わり方の中で、わりと無理がない形だった。

店長は、3週間後に1回連絡をくれることになった。 そこで「行動だけは書けた」と言ってくれたら、次の段階を渡そう。 「書けなかった」と言ってきたら、もう少し前のステップ——「メモアプリを開く」だけ——にするかもしれない。

効いた手順は、誰かに使えるかもしれない

3年前の自分にとっては、ジャーナリングは「手が止まる作業」だった。 いまは、移動中の5分で書けるくらいに軽くなった。

軽くなる過程で、私は無自覚にいくつかの段階を踏んでいた。 それを言葉にして、誰かに渡せる形にしておくこと——それが、自分に効いた何かを、外に出す唯一の方法だった。

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